第70回記念写真道展 入賞作品・入選者発表

【総評】
3月4日、5日に北海道新聞社会議室にて行われた第70回記念写真道展審査。応募数は4部門合計3,789点。前年と比べて約400点増えたのは足踏みしていた世の中がようやく前へと動き出した証でしょう。審査は第1次から第5次まで(第3次からは審査委員長のみの単独審査)行いましたが、激戦を勝ち抜いた入選入賞作品はどれもレベルが高く、全国規模、いや世界規的フォトコンテストでも結果を残しそうなハイレベル作品ばかりでした。第1回の浜谷浩に始まり、木村伊兵衛、土門拳、林忠彦、名取洋之助、桑原甲子雄、三木淳、渡辺義雄、長野重一、奈良原一高、東松照明、細江英公、秋山庄太郎、中村正也など日本の写真界を代表する写真家が審査委員長を務めてきた写真道展70年の重みを感じました。

 栄えある第70回記念写真道展大勝は第1部(自由)1席、文部科学大臣賞、新ひだか町・野田功さんの作品「警戒」に。パッと見で引き込まれる独特の表現世界に圧倒されました。シンプルで秀逸な画面構成、狙い澄ましたシャッタータイミング、トーン豊かなモノクロ階調から愛するものを本気で守る厳しさが緊張感よろしく伝わってきました。

 第2部(観光・産業)1席、国土交通大臣賞は江別市・木村克己さん「湿原・列車」。音別町の雄大な風景を走る貨物列車はスケール感抜群で、重く垂れ込めた雲、打ち寄せる荒波、うっすらと差し込む光が想像力を掻き立ててくれます。

 第3部(ネイチャーフォト)1席、環境大臣賞は札幌市・岩間敦子さん「飛んだ!」。狙わないと撮れない、狙ってもなかなか撮れない、母川回帰した鮭が水面から飛び出した瞬間を絶妙なシャッタータイミングで活写、水飛沫の形の良さも作品を引き立てました。

 第4部(学生)最優秀賞は旭川市・村椿紬音さん「生きた証」。作者の身内でしょうか。ローソクを吹き消そうとする百寿の男性が印象的です。写真は撮影時の記憶や思い出の引き出しを開ける鍵。本作には時間経過とともに価値が出る家族写真の魅力が詰まっています。

 最後に、世界中から人々が訪れる北海道は、風景、動植物、文化、慣習などたくさんの魅力に溢れています。撮り尽くされたと思う被写体でも視点やアプローチを変えればまるで違う作品になります。まだまだ多くの可能性を秘めていると信じ、これまで以上に地元ならではの作品を後世に残して頂けたら幸いです。

審査委員長 清水哲朗 

プロフィール:
1975年横浜生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信の助手を3年務め、23歳でフリーランスとして独立。1997年よりモンゴル取材をライフワークとし、独自の視点で自然風景からスナップ、 ドキュメントまで幅広く撮影。個展開催多数。出版物は写真集「CHANGE」「New Type」「轍」「おたまじゃくし Genetic Memory」、写真絵本偕成社世界のともだち「モンゴル」、フォトエッセー「うまたび-モンゴルを20年間取材した写真家の記録-」など。第1回名取洋之助写真賞、2014日本写真協会新人賞、2016さがみはら写真新人奨励賞。公益社団法人日本写真家協会会員

https://tokyokarasu.com

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第1部(自由)
一席 写真道展大賞・文部科学大臣賞 野田 功(新ひだか町) 警戒
二席 北海道知事賞 出口 慎也(留萌市)  機械仕掛けの花嫁 
二席 北海道教育委員会教育長賞 岩間 廣(札幌市)   まいった まいった 
二席 北海道新聞社賞 池田 恵美子(函館市)  みんな一緒に深呼吸
二席 ニコン賞 伊藤 建夫(帯広市)   夕陽に輝く 
三席   上原 友樹(仁木町) ねこネコ猫
三席     宇都宮 和雄(函館市) 語い
三席    坂口 チヨ(函館市) スリ スリ
三席    高橋 あや子(千歳市) 風の旋律
三席    畑端 憲行(新ひだか町) 深眠する線香番
三席    吉田 清治郎 (旭川市)
三席    吉野 友昭(江別市) 跳び立て青春 

(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)

第2部(観光・産業)
一席 国土交通大臣賞 木村 克己(岩見沢) 湿原・列車
二席 札幌市長賞 長岡 秀文(札幌市) 下からの迫力をパチリ 
二席 ニトリ賞 菊 譲(余市町)  余市名産林檎の選果
三席   真田 美代子(倶知安町)  大雪の木材運び
三席   吉田 清治郎(旭川市)  「アートだ!」旧校舎
三席   吉野 友昭(江別市)  虹色
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第3部(ネイチャーフォト)
一席 環境大臣賞 岩間 敦子(札幌市)    飛んだ!
二席 北海道写真協会賞 河野 仁志(札幌市)    隠れているつもり
二席 北海道新聞野生生物基金賞 水野 敏幸(釧路市)  木登りきのこ
二席 道新文化センター賞 菅原 恵子(恵庭市)  生命力
三席   粟木 敦子(札幌市)   うるさくしないで
三席   佐々木 歩(苫小牧市)  霞渡る
三席   山本 克博(北広島市)  お食事タイム
三席   吉田 清治郎(旭川市)  今日でお別れ
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第4部(学生)
最優秀賞   村椿 紬音(旭川北高校) 生きた証
優秀賞   小林 愛花(浦河高校) ぼくがまもるんだ!
優秀賞   羽生 智俊(札幌啓成高校) 朝霧の中へ
優秀賞   向山 晃太(北広島高校) その先へ
優秀賞   八木 大空(室蘭工業大学) 流れる速さ
優秀賞   李 晗娜(北広島高校) 芽吹き
【巡回展日程】上記以降各地位の巡回展を行います。
・名寄市民文化センター 5/16〜5/25(終了) ・三笠市民会館 8/10〜8/12
・室蘭市民美術館 6/2〜6/7(終了) ・旭川市民文化会館 8/23〜8/27
・羽幌町立中央公民館 6/14〜6/18 ・北網圏北見文化センター 9/20〜9/24(会場都合により中止)
・苫小牧市文化交流センター 6/30〜7/2 ・函館市芸術ホールギャラリー 11/23〜11/26
・釧路市生涯学習センター 7/19〜7/23 ・網走市立美術館 12/16〜1/14

・別海町中央公民館 7/25〜7/28