第67回 写真道展 入賞作品・入選者発表

【総評】写真家 嶋田 忠

突然の新型コロナウイルス、今世界は未経験の混乱の中です。
3月初めに予定されていた第67回写真道展の審査が延期となり、3ヶ月遅れでようやく審査会が行われました。予定が大きく変更されたため、急きょ私が審査委員長をお引き受けすることになりました。
北海道に移住して40年、これまで全く地元北海道の写真界に協力することができませんでしたが、伝統ある写真道展にお声がけ頂き、新鮮な緊張感を持って審査をさせて頂きました。
写真道展大賞で第2部(観光・産業)一席の仲島静夫さんの「余生」は引退したラッセル車を真正面から見据え、威風堂々とした作品です。光の捉え方が素晴らしく開拓時代に活躍したラッセル車の力強さと、それに携わった人々まで連想され、迷わず選ばせて頂きました。
第1部(自由)一席、難波江さんの「涼しいよ」はなんといっても表情が最高!カラフルでほっと心安らぐすてきな作品です。ともすれば心がギスギスしがちな昨今、そんな気持ちを優しく包み込んでくれます。
第3部(ネイチャーフォト)一席、袰田祥健さんの「美味」は逆光を巧みに使い、キノコがいかにもおいしそうで生き生きとしています。野生そのものをおいしそうに撮るのは意外に難しいものです。ご本人がそう感じて初めて作品からにじみ出てくるのでしょう。3部は応募数が最も多く、そのほとんどが生き物でしたが、こういうどっしりとした作品も撮ってほしいと思います。
1,2,3部の作品を比較してみると、3部は安易で技術的にも稚拙な作品が多く目立ちました。デジタルカメラの進化の恩恵を最も受けているのは野生生物の世界です。正確なオートフォーカスに秒間10こまは当たり前、中には秒間20こまも撮影できるカメラも珍しくありません。便利な分もう少し考えて撮影してほしいと思います。作品は自分の感動の発露です。構図、露出、色などを探求し、プリントを仕上げてほしいと思います。また、生き物に対する知識を深めることで、被写体の魅力をより引き出せるようになるはずです。これは生き物に限らずすべての分野にいえることです。知識は決して無駄になりません。知識が感動をより深め、それが傑作を生むのだと私は信じています。最後に1人1部門10点という応募点数は多いと思います。撮影した写真の中からこれはという作品を選んで応募するのですから、せいぜい1部門2~3点がいいところです。自分の作品をより吟味して選ぶことで見る目が養われ、それは必ず撮影時に現れるものです。

<略歴>
71年日本大学農獣医学部卒業 72年フリーの写真家になり以後野鳥を中心に独自の世界を開拓
80年千歳市に移住 2014年千歳市蘭越に「嶋田忠ネーチャーフォトギャラリー」開館
現在も世界の熱帯雨林で鳥類の撮影を続けている。作品集に「カワセミ 清流に翔ぶ」「火の鳥 アカショウビン」など多数。太陽賞、日本写真協会年度賞など受賞。19年「野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」(東京都写真美術館)など全国各地で作品展を多数開催

<他審査員> 武藤省吾(写真道展審査会員)・中野潤子(写真道展審査会員)・加賀谷重雄(写真道展審査会員)・植村佳弘(北海道新聞社編集局写真部)
<作品名をクリックすると別窓で作品が見られます。Javaを有効にして、ポップアップウインドウを許可して下さい>
第1部(自由)
一席 文部科学大臣賞 難波 江 涼しいよ
二席 北海道知事賞 平瀬 正人 突風
二席 北海道教育委員会教育長賞 塩浜 郁夫 早く食べたいな
二席 北海道新聞社賞 北 宏保 路地裏
二席 道新文化センター賞 大坪 恵子 お留守番
三席   山下 和子 身支度
三席   佐々木 歩 輝きの道
三席   島 伸次 隣室の人
三席   安田 敏彦 夢心地
三席   池内 智子 金華想
三席   柏原 正男
三席   増井 典子 電車ごっこ
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第2部(観光・産業)
一席 写真道展大賞・国土交通大臣賞 仲島 静夫 余生
二席 札幌市長賞 平崎 進 支笏湖ブルー
二席 ニトリ賞 伊藤 嘉睦 めざめる浜
三席   小山 満 心を込めて
三席   輪島 礼子 暮れなずむ小路
三席   増井 典子 浜の笑顔
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第3部(ネイチャーフォト)
一席 環境大臣賞 袰田 祥健 美味
二席 北海道写真協会賞 森井 透 足跡
二席 道新文化事業社賞 上原 友樹 On my way.
二席 北海道新聞野生生物基金賞 佐藤 祐子 残雪波模様
三席   小口 竹彦 氷上バトル
三席   臼井 誠 冬仕度
三席   浦崎 毅子 負けないぞ
三席   石橋 文則 狙い定めて
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第4部(学生の部)
最優秀賞 佐々木 絢海
優秀賞 須藤 陽依里 無情
優秀賞 田村 楓 時を経ても
優秀賞 山田 晏古 歓喜
優秀賞 嶋田 裕太 escalator

優秀賞

中村 純旗 感情の溢れ